<第2回>型紙不要のスタイキット「Fanfare」が届ける播州織の魅力

Kondo Factory
播州織生地メーカー
豊かな自然環境を有する兵庫県「播州・北播磨」地域。先染め織物の国内トップシェアを誇る「播州織」は、ここ兵庫県・播州地域からすべて生産されています。
今回ご紹介するのは、播州織の特徴を生かした「型紙不要」のスタイキットシリーズ「Fanfare」を展開するコンドウファクトリー。
伝統を引き継ぐ若き職人、コンドウファクトリー社長の近藤良樹さんに、<全2回>にわたって、播州織の魅力や、ブランド立ち上げの思いについて語っていただきます。
◆目次◆
<第1回>220年の歴史「播州織」の未来を背負う若手職人の挑戦
<第2回>型紙不要のスタイキット「Fanfare」が届ける播州織の魅力
◆◇◇◇
>:
御社の歴史について改めてお聞かせください。
近藤:
創業自体は祖父の代の1961年で、いわゆる播州織の輸出量が最盛期を迎えて機屋もたくさんあった時代に創業しました。当時は「ガチャマン景気」と言われて、1回「ガチャ」と機を織れば「1マン円」儲かるくらいの時代だったんです。
>:
しかし、徐々に海外の安価な製品に押されて輸出量が減っていったのですよね。
近藤:
はい。特に機織りの工場は直接アパレルメーカーに商品を卸しているのではなく、間に何社か商社を挟んで生地を納品しています。なので「播州織」というだけでは差別化が図れず、多くの機屋は淘汰されていってしまいました。
>:
例えば「今治織」のように、織物自体がブランド化できない理由が何かあったのでしょうか?
近藤:
もちろん今でもブランディングの努力はしていますが、「今治織」はタオルやハンカチといった比較的間に入る縫製会社や商社が少ない商品を扱うため、ブランディングしやすかったというのもあると思います。「播州織」が主力とするシャツは間に多くの商社が入るのと、最終的メーカーのブランド名で購入される商品なので、わざわざ「播州織」を押し出す必要性が無いのです。
>:
そんな中でどのように差別化を図られたのでしょうか?
近藤:
そこで私の父親の代にジャガード織ができる設備を導入し、複雑なパターンも織れる技術を磨いていきました。私は高校卒業と同時に機織りを始め、2011年に社長就任したタイミングでコンドウファクトリーとして法人化しています。
>:
弟さんと一緒に法人化されたのですよね。
近藤:
はい。弟は個人でデザイナーとして活動していたのですが、法人化のタイミングで一緒になりました。今自社ブランドで出している商品デザインなどは全て弟が担当しています。
◇◆◇◇
>:
御社のオリジナルブランドについてもお聞かせください。
近藤:
まず最初にオリジナルブランドとして企画したのがこの「蝶ネクタイキット」でした。
>:
キットから始めた理由は何かあるのですか?
近藤:
実はこの地域は生地の産地ではあるのですが、シャツなどを作れるような縫製会社が無いんです。であれば、お客様自身に縫製してもらおうという発想でキットをスタートしました。結果的に「播州織の生地」の魅力をそのまま感じてもらえるのもキットの良いところでした。
>:
そこからスタイキット「Fanfare」が生まれた背景をお聞かせください。
近藤:
ちょうど私に子供が生まれたタイミングで、子供ができると手作りをするようになるな、というのが着想のきっかけでした。赤ちゃんが使っても播州織なら色落ちもしませんし、コットンなので安心安全です。ちなみにポスターのモデルは私の子供です(笑)
近藤:
また、「Fanfare」では縫製のストレスをできるだけ減らすために「型紙なし」で作れるようにしました。ジャガード織の技術を生かして、生地そのものに型紙の機能を果たす柄を描いているんです。さらに縫い線も直接生地に描いています。
>:
生地そのものに型紙の柄や縫い線が直接描かれているのは斬新です。
近藤:
あまり同じことをやっているメーカーは無いと思いますね。経験ゼロからキットを企画する我々だからこそ「Fanfare」は生まれました。これも結果的にではありますが、播州織やジャガード織の魅力を肌で感じていただけるシリーズになったと思います。
◇◇◆◇
>:
今後もオリジナルシリーズは拡大予定なのでしょうか?
近藤:
新しく企画した商品がこのハンカチシリーズです。
近藤:
ハンカチを作れる縫製会社は地元にあるので、その会社と共同で商品を作りました。一般的なハンカチで使われる糸の倍の太さの糸を使用しています。先染めの播州織だからこそ使える糸で、優しい肌触りと、毎日使っても色落ちしない耐久性を実現しています。
>:
播州織の特徴を生かしたシリーズをどんどんと拡大していかれるのですね。
近藤:
やはりある程度品数を揃えないと、なかなかお客様にも見ていただけないですし、店舗でも取り扱っていただけません。なので、コンドウファクトリーのオリジナル商品を拡充させていきたいと思います。
>:
より多くの方々に播州織の魅力が届くといいですね。
近藤:
そうですね。私たちは播州織・ジャガード織という比較的高価な技術を使いながらも、「お客様が手にとりやすい価格」で作ることをコンセプトにしています。今でも生産の仕方を日々見直して、どうやったらもっと値段を下げられるか試行錯誤中です。
◇◇◇◆
>:
では最後に今後の展望をお聞かせください。
近藤:
「Fanfare」には「歓迎」という意味がある通り、このシリーズには「子供が出来て歓迎」という意味と「ママの準備を始めましょう」ということでコンセプトを込めて作っています。
近藤:
まずはスタイキットから始まり、子供が大きくなるのに合わせて、様々な手作りをする機会に寄り添えるブランドにしていきたいと思っています。そうした中で、ものづくりや播州織
に少しでも興味を持っていただけると嬉しいですね。
>:
ぜひ播州織の火を絶やさぬよう、応援していきたいです。
近藤:
おかげさまで、自社ブランドを始めてお客様と直接接点を持てるようになったおかげで、商品を見て「すごい!」と言っていただける機会が増えました。作り手としては一番嬉しい瞬間ですし、それだけで辛いことでも乗り越えることができます。
近藤:
ぜひ商品を手にとって、商品に対する率直な反応をいただけると嬉しいなと思います。
◇◇◇◇
いかがでしたでしょうか?普段あまり織物に馴染みの無い方でも手に取りやすい価格でコンドウファクトリーは「播州織」の商品を展開しています。
(画像引用:播州織ネクストジャパン)
日本のものづくりの力を。手作りの楽しさを。ぜひ「Fanfare」などから体感してみてくださいね。応援します!Cheer!
取材・文・写真:小縣拓馬
写真協力:コンドウファクトリー
【是非Episoze公式SNSのフォローもお願いいたします。】
Twitterはこちら
Facebookはこちら
Youtubeチャンネルはこちら
Instagramはこちら