<第3回>ホビー界、宮城の星。「箱庭技研」が目指す未来 

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<第3回>ホビー界、宮城の星。「箱庭技研」が目指す未来 

箱庭技研

ホビー関連商品の製造

宮城県で起業し、世界を相手にジオラマシートを展開する「箱庭技研」。鈴木さんは「まだ振り返る段階では全然なくて、もっと先を見ている」と語ります。

地方から世界へ、鈴木さんの幼少期からこれまでと、箱庭技研のこれからの展望を聞きます。

 

◆目次◆

<第1回>ジオラマシート専門「箱庭技研」とは? ~マイコレクションに、活躍の場を与える~

<第2回>自分の"好き"に回帰せよ!「箱庭技研」創業秘話

<第3回>ホビー界、宮城の星。「箱庭技研」が目指す未来

 

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最終回となりますが、今回は鈴木さんご自身の体験について、おうかがいしたいと思います。略歴は前回少しお話いただきましたが、まずご出身から教えてください。

 

 

 

鈴木:

生まれは静岡なのですが、ずっと東京で育ちました。ですので、東京が地元です。

 

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小さい頃は、やはりトミカが好きだったのですか?

 

鈴木:

トミカとガンプラですね。鉄道模型や銃玩具にも興味がありました。ラジコンなどにもとても興味がありましたが、お金が無くて買えませんでした。ただ、小学校低学年以降は、もう触らなくなってしまいます。

 

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そういう意味では、オタクと言うよりも普通の方という感じですね。他の趣味は?

 

鈴木:

中学の時に、親戚が宝くじに当選してカメラを買ってもらいまして、電車が好きでしたので電車を撮りに行っていました。中学二年生の頃に、『月刊カメラマン』という雑誌のコンテストに応募して、金賞をもらったこともあります。当時3万円だったかな? 賞金も出て、嬉しかったですね。

 

その後も、賞金が欲しかったので応募したのですが、次は銀賞になってしまい、邪念が入るとそういう結果になってしまうんだなあと(笑)。しかし、撮影技術は十分身に付いたと思います。

 

▲月刊カメラマンに掲載された鈴木さんの金賞受賞作品。当時の西武鉄道の、引退する車両を撮影したものでした。

 

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(笑)乗り物と撮影という意味では、ジオラマシートに繋がりそうな話ですね。中高も写真を続けたのですか?

 

鈴木:

コンテストも銀賞の次は佳作になってしまったりして、「コレはもうダメだ」と老後の楽しみにとっておくことにしました(笑)。

中学では「鉄道部」という部を創設して、初代部長になりました。文化祭などでは、時刻表片手に来場者の方へ旅のプランを提案して、電車の乗り継ぎ表を作ってあげて喜ばれました。中学時代は雑誌で金賞とったこともあって、高校野球のカメラマンのバイトをしたこともあります。今考えると、中学生が高校生の出場選手を撮影しているなんて、何か不思議な光景ですね。

カメラに熱中しているとモテないと思い、中学でカメラは一旦卒業しました。高校から頑張ったのは、アルバイトでしょうか。引っ越し屋さんやラーメン屋さん、バイク屋さんにもバイトに行きましたね。

 

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その後は大学に?

 

鈴木:

先ほどお話ししたインターネットベンチャーの会社(第2話参照)で働きながら、社会人として夜間大学に通ったんです。午後3時まで勤務して、そこから大学に行って、9時まで勉強して会社に帰ってきて終電で帰宅という生活です。よく、電車がなくなってタクシーで帰っていました。

 

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すごい生活ですね!

 

鈴木:

若いからできたんだと思います。ちょうど、ネットバブルの時代ですね。1999年頃です。

 

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では、ネットバブルのまっただ中にいらっしゃったんですね?

 

鈴木:

本社がニューヨークにある会社の、日本現地法人で働いていました。まだ日本に法人登記する前の段階だったのですが、ちょっとパソコンに詳しい人間がほしいということだったので、最初はバイトで入ったんです。もともと、最初に使ったパソコンも自分で組み立てた自作パソコンだったりしたので、好きだったんですよね。

 

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でも、デジタルの世界は合わなかった?

 

鈴木:

デジタルの世界は大好きです。パソコンも大好きです。ただ、最初のネットバブルが弾ける中で、自分にはこの世界はちょっとついていけないなと思って。何と言うか、形の残らないものに対してお金をもらう職業、というものに疑問を持つようになりました。

 

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「虚業」みたいに言われた時代もありましたもんね。そこでデジタルとは関係のない健康食品会社さんに行くことになったけれど、東日本大震災があって。。

 

 

鈴木:

東日本大震災の日、ニュースを見ていたら、気仙沼の魚市場が津波で流されて。取引先があの近くにあったので、言葉が出ないまま茫然と映像を見ているしかありませんでした。

先ほども話しましたが(第2話参照)震災の三ヶ月くらい前には、取引先にも近いし向こうで暮らそうと、気仙沼で物件探しもしていたんです。でも、会社も原料も、なにもかも流れてしまいました。不幸中の幸いで、人はみなさん無事だったのですが。

 

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奥さんの実家があるとはいえ、その時点で生活基盤としての宮城県とは、ある意味関係はなくなったんですよね?

 

鈴木:

そうなのですが、震災の数日後に、車に食料や物資を目一杯詰め込んでこっち(宮城県)に来て、家内の身内や避難所を回ったんです。そのとき、雪がぱらついている仙台市内の、あれはスーパーマーケットだったでしょうか。

おそらくは食料品のために、皆さんナベやボールを持って、静かに並んでいるんですね。その情景が鮮烈に記憶に残りました。日本人って、すごいんだなと。暴動や略奪をせずに、みなさんきれいに列を作って並んでいるんだって。

 

その後、現金や支援物資という話がたくさんある中で、一番支援になるのは被災県に行って会社を興して大きくして、そこで従業員を雇用できるような会社を作ることなんじゃないか?という気持ちを抱きました。奥さんの実家がある土地でもありますし。

 

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宮城県で起業するというのは、そういう意図があったんですね。かなり固い決意なのだと分かりました。起業して6年が経過したわけですが、振り返ってみて、いかがですか?

 

鈴木:

何度も感じていることなのですが、道半ばなんです。頂上が10合目なら、まだ1、2合目だと思っています。もっとやりたかったことが一杯あるのですが、できなかったこともありまして、階段を一段ずつ進むことで、その道がちょっと見えてきたという感じです。ですから、まだ振り返る段階では全然なくて、もっと先を見ているところです。

 

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今後の、コンセプトや具体的なプランを、話せる範囲で構いませんのでお教えください。

 

鈴木:

現時点では、フィギュアを出したいと思っています。ミニカーに合うスケールのフィギュアです。これまでは、ジオラマシートの上に他社さんのミニカーを置いて楽しむだけだったのを、そのミニカーの脇に我々が作った人間を立たせたいんです。

 

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こちらも、DVDやジオラマシート同様、ミニカーからの発想ですね。

 

鈴木:

そうですね。僕はあらゆる乗り物が大好きですが、一番好きなのは、やはり車です。ただ、立体物は商品化がものすごく大変です。金型も作らなくてはならないし、彩色もあります。

しかし、コンピュータと3Dプリンタの技術を使うことによって、ブレイクスルーといいますか、解決できることがあると考えています。最終的には、できるかどうかはまだ分かりませんが、ジオラマシートからスタートして、その上にあるものも作っていけたらと思っています。

 

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さいごに、宮城県からの発信というテーマでおうかがいしたいと思います。

 

鈴木:

地方発信という意味では、今はネット通販も普及していますし、我々は海外への出荷もずっとやっていて、ほぼ世界中のユーザーに商品を発送しています。これまで海外のお客さんにのべ1万件くらい発送していると思います。海外から見れば、東京も、模型で有名な静岡も、宮城であっても全然関係ないんですよね。

 

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今の時代、地方からだって全然いけるぞ! と。

 

鈴木:

地方自治体が破綻寸前というニュースが流れることもありますが、地方だってもっと盛り上げれば、いろいろやっていけるんだということを、証明したいんです。確かに、ちょっとした会議で東京に行かなければならないこともあって、それは面倒なんですけれども、それさえ我慢すれば、本当に快適ですよ!

 

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土地も広いわけですからね。

 

鈴木:

たとえばレーザー加工をはじめとした工作だって、東京ならば騒音や排気の問題もありますが、こちらでは24時間フル稼動しても問題ありません。こんなに自由なのは本当に素晴らしいと思います。お世話になった名古屋のFAbLabのオーナーさんが会社訪問にいらっしゃった時、「夢のような環境だ!」とおっしゃっていました。

 

▲レーザー加工機に向かう鈴木さん。作業場もゆったり広め。ここからジオラマシートやコレクションベースが旅立っていきます。

 

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震災後というメッセージはもちろんあるわけですが、それを除いても、いろいろな地域からホビー系の企業が出てくるというのは、応援したくなります。

 

鈴木:

そういう意味では、先駆者のひとりとして頑張らないと、と思っています。ホビーショーも、静岡や東京、大阪、最近は九州でも開催されましたが、こちらのほうでは全然ありませんから、どんどん盛り上げたいですね!

 

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とても夢のある話です。これからも頑張ってください。

 

鈴木:

ありがとうございます。自問自答を繰り返しながらやっていきたいなあと、思っています。

 

▲趣味ならトコトン遊び尽くせ! のキャッチを手に。この言葉は、箱庭技研のホームページにも書かれています。

 

 

◇◇◇◇

宮城から世界にホビー文化を発信する箱庭技研のエピソード。まだ1、2合目で道半ばとおっしゃる鈴木さんの目には、いったいどのような頂が見えているのでしょうか。

トコトン遊び尽くしたいあなたに。これからも魅力的な商品を送り出してくれるに違いありません!

 

文:吉川大郎

取材・写真:小縣拓馬 

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