ただの問屋ではない?ホビー文化を進化させるマイルストンの挑戦

マイルストン
ホビーアイテムの卸売、企画、製作、販売、PR
メーカーとのコラボレーション商品を企画開発。取り扱い全商品をオンラインで見える化。
次々に発表する斬新な取り組みでホビー業界の中でも一際異彩を放つ問屋が横浜にある。その名も「マイルストン」。
今回は創業者・代表取締役の小野敏廣さんに、同社創業秘話や今後の展望について伺いました。
ポケモンカードから始まったホビー問屋「マイルストン」
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1997年にマイルストンを創業された経緯についてお聞かせください。
小野敏廣(以下、小野):
私はもともとリクルート出身で、リクルートの子会社でスノーボード関連商材の商社を7年間にわたって経営していました。スノーボードブームだったことに加えて私自身がスポーツ好きだったこともあり、リクルートでは珍しい「ものを売る」商売をしていたんです。
小野:
そこから1997年にマイルストンを創業したのですが、最初は色々と事業を試行錯誤していました。そして1年経ったころに出会ったのが、大流行していた「ポケモンカード」です。出版していたメディアファクトリーが当時はリクルートのグループ会社だったこともあり、それが縁で商品を取り扱うようになったのです。
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ではもとからホビー関連で創業したわけではなかったのですね。
小野:
最初はまったく経験も知識もありませんでしたね。しかし取り扱いから半年で関東圏200店舗に卸先店舗を拡大し、さらにはポケモンカード以外のカードゲームの卸も始めて事業を拡大してゆきました。
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いまではホビー商材全般で幅広く取り扱われています。
小野:
キャンディトイブームやフィギュアブームなど、それぞれの時代の潮流に合わせて新しい商材ジャンル、卸先店舗を拡大してきました。おかげさまで22年間、2度ほどの踊り場を除いてずっと右肩上がりで成長してきています。
ただの問屋ではいられない
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「ただの問屋ではいられない」とホームページで掲げられています。マイルストンが他の問屋さんと異なる部分をお聞かせください。
小野:
問屋というのは基本的にはメーカーから仕入れた商品を店舗にそのまま流して売る、という商売です。しかしそれだけでは後発の私たちは勝てない。なのでとにかく「ひと工夫」加えて商品を売る、ということを創業以来続けています。
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たとえばどのような工夫でしょうか?
小野:
たとえば創業当初のポケモンカードでは、問屋である我々がカードイベントを企画し、店舗に子供たちを呼び込むということをやっていました。私も子供たちとバトルして「おじさん下手だね」なんて言われたりしていました(笑)。催事場に開店前から子供たちの長蛇の列ができていたときは快感でしたね。
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たしかに、問屋さんが自ら催事を企画するというのはあまり聞きません。
小野:
ほかにも「小さく仕入れて小さく売る」ということを徹底しました。書店などはたくさんの在庫を抱えることに慣れていません。なので少しのオーダーを毎日聞いて周り、受けたオーダーは翌日に届けるようにする。そうした利便性を提供することで、大きな問屋さんには無い価値を提供したんです。
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御社のサイトを見ると、すべての取り扱い商品をオンラインで公開されているのも印象的です。
小野:
ウェブでの情報提供に関しても、紙媒体の情報提供が業界の主流だった創業時からやり続けています。毎日商品情報をアップロードするのは非常に骨の折れる作業ですが、そういった付加価値を生み出すことがこそが私たちの存在意義の根幹です。
日本のホビー文化を進化させる
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「日本のホビー文化を進化させる」と掲げる御社の今後の展望についてもぜひお聞かせください。
小野:
実は一時期、日本の伝統工芸品を仕入れて世界に売るビジネスをやっていた時期があります。その経験を経て感じたのは、そういった「日本のものづくり」の魂が連綿と受け継がれているのが「ホビー文化」ということ。
そして日本の「ホビー文化」の魂は、今度は国境を超えて海外にも広がっています。
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アジア圏を中心として日本のアニメやホビーが人気ですね。
小野:
はい。なので、世界中に密なパートナーを作り日本のホビー情報を発信できる仕組みづくりを進めています。日本の良いコンテンツを世界中のみなさんに楽しんでもらう一助になれればと思っているのです。
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「ただの問屋じゃいられない」というメッセージをまさに体現するチャレンジですね。
小野:
弊社は小さな会社ですが、「地球上すべての人に楽しみを届けたい」という志をもつメンバーが集まれば、今以上に輝く会社になれるでしょう。その日がきたら、私も安心して引退できると思います(笑)。
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「小さい会社だからこそ、できることがある」と強調される姿が印象的な小野社長。
既成概念にとらわれない、面白い取り組みがマイルストンからは今後もどんどんと生まれてきそうです。
取材・文・写真:小縣拓馬