<第2回>「チョイプラ」は偶然生まれた?開発者が語る【cavico|キャビコ】誕生秘話

cavico|キャビコ
個人クリエイターとの「共創」プラモブランド
会社も出自もバラバラ。そんな「cavico|キャビコ」プロジェクトメンバーの馴れ初め、そしてブランド誕生にいたるまで。業界未経験の3人が人気シリーズ「cavico|キャビコ」を立ち上げるまでのエピソードをお聞きします。
◆目次◆
<第1回>チョイ気になるあのプラモ!いま話題の【cavico|キャビコ】が人気なワケ
<第2回>「チョイプラ」は偶然生まれた?開発者が語る【cavico|キャビコ】誕生秘話
<第3回>プラモ界のインディーズレーベル?【cavico|キャビコ】が目指す未来
「イグザイン」から始まった出会い
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3人の出会いについてあらためてお聞かせください。
宮城島:
ガンダムのメカデザイナーとして有名な大河原邦男さんがデザインした「イグザイン」の使用権が、とある中小企業活性化プロジェクトとして無償で中小企業に提供されたんです。
▲キャビコ第1弾の商品となった「イグザイン MiniXine (ミニザイン)」
宮城島:
私はガンプラ世代ど真ん中なので大河原先生のデザインが使えると聞いて心踊りましたし、会社としてもいつか自社製品を作りたいと考えていました。
とはいえいきなり商品化はコスト面でハードルが高いので、まずはイグザインのガレージキットを作ってワンダーフェスティバル(ワンフェス)に出展してみたんです。これが全ての出会いの始まりでした。
西沢:
私は「人型重機」のデザイナーとしてワンフェスに出展していて、その時に宮城島さんと名刺交換したんです。あとあと家に帰って名刺整理をしていたら金型メーカーの社長だと気づいて、「これは人型重機のプラキット化につながるかもしれない!」と思って慌てて連絡しました(笑)
宮城島:
西沢さんが「クラウドファンディングでお金を集めるから、人型重機のプラキット化に協力してほしい」と相談してきたので、ぜひ協力しようという話になりました。その時点では「イグザイン」と「人型重機」の商品化はまったく別の企画として進んでいたんです。
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その時点ではキャビコという企画は存在してなかったのですね。
宮城島:
はい。伊藤さんとの出会いも、twitterで「イグザイン」の3Dモデルを投稿しているのを偶然見つけて、「それ、3Dプリンタで出力させてください」とDMを送ったのがきっかけで(笑)。
伊藤:
昨今はジュエリーもCADで原型をデザインする時代です。私もロボットが好きなので、CADの練習がてら「イグザイン」を自己流にアレンジしてデザインしていたんです。まさかこんな出会いが待っているとは思ってもいませんでしたね。(笑)
デビューでいきなりあの「大河原邦男」さんサイン会!?
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そこからどのようにしてキャビコが誕生するのでしょうか?
西沢:
まず2017年12月に私の「人型重機」クラウドファンディングがスタートし、2018年2月に目標金額150%を達成してプラキット一般販売が決定しました。
宮城島:
ときを同じくして、「イグザイン」の先行販売を2018年2月のワンフェスで実施しました。そのときはキャビコというシリーズ化までは考えていなくて、単に「エムアイモルデの自社製品」という位置付けでした。
西沢:
でもどうせやるなら「人型重機」と「イグザイン」を一つのブランドとして、一般販売したらいいんじゃないかと提案したんです。
それで生まれたのが「cavico|キャビコ」です。
宮城島:
金型では凹側をキャビティ(Cavity)、凸側をコア(Core)と呼びます。Cavity + Core ということで【cavico|キャビコ】と名付けました。「イグザイン」の一般販売用パッケージも印刷してしまった後にブランド名が急遽決まったので、一度刷ったパッケージを捨てて、慌ててパッケージをデザインし直しました。今となってはいい思い出ですね(笑)。
▲キャビコ誕生までの道のりを時系列で整理しながらお話ししてくださる宮城島さん。
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ついにキャビコの誕生ですね。そして記念すべきブランド第1弾商品は大河原邦男先生デザインの「イグザイン」。
宮城島:
ブランドの初商品で大河原先生の名前を使わせていただけたのは大きかったですね。ブランド発表と初商品販売会を兼ねたイベントとして先生のサイン会も実施したのですが、想定以上の大盛況でした。あとで話を聞くと、大河原先生がプラモデルの発売イベントでサイン会を実施したのは初めてだったそうです(笑)。
西沢:
我々はみんなおもちゃは好きですが、業界では素人集団。でもだからこそ、怖いもの知らずでいろんなことにチャレンジできているのかもしれません。
大手にも負けない技術力を見てほしい
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いまでは様々なプラモデル売り場で必ず見るといっても過言ではないほど、商品をよく見かけるようになりました。
西沢:
最初は馴染みの模型店店主から問屋さん情報を聞き出して、まだなんの商品も無い段階から問屋さんを宮城島さんと回って口説いていきました。今では業界のほとんどの問屋さんに商品を取り扱っていただいています。
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それで本当に取り扱ってもらえるのがすごいです。
宮城島:
まず最初の「イグザイン」で大河原邦男先生と関わることができているという事実で信用いただけたのは大きかったと思います。加えて、比較的低価格でクオリティの高い商品を作れる技術力も評価いただいたのだと思います。
西沢:
実際にお話を持っていくと、「こういう新しいブランドを取り扱いたかった」と言っていただけることも多かったです。大手メーカーの大量生産品だけでなく、我々のような極小メーカーにスポットライトがあたり始めていると実感しましたね。
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実際に広く一般流通されて、ユーザーの反応はいかがでしたか?
宮城島:
「チョイプラ」はプラモデル初心者はもちろん楽しめますし、普段プラモで遊ぶ人にとっても「息抜き」的な存在としてちょうどいい(笑)。
その上で、金型メーカーとして「モールドはしっかり出す」ということにはこだわっているので、小さいながらにもカスタムしがいのあるクオリティの商品になっています。まだまだ広く楽しんでいただけるシリーズになると手応えを感じていますね。
▲イグザインを手に宮城島さん。小さな商品にも、渾身の技術力をつぎ込んでいます。
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To be continued<第3回>プラモ界のインディーズレーベル?【cavico|キャビコ】が目指す未来
取材・文・写真:小縣拓馬