<第1回>精密機器分野からホビー業界に進出 ~PLUMの精度と品質の理由~

<第1回>精密機器分野からホビー業界に進出 ~PLUMの精度と品質の理由~

<第1回>精密機器分野からホビー業界に進出 ~PLUMの精度と品質の理由~

PLUM

長野県諏訪発のフィギュア・ホビーメーカー

PLUMブランドを展開するピーエムオフィスエーは、年末に目玉の新製品「JR東日本201系直流電車(中央線)モハ201・モハ200キット」(税抜 12,500円)と「JR東日本201系直流電車(中央線)クハ201・クハ200キット」(税抜 12,500円)をリリースします。

これまでフィギュアメーカーとして、またシューティングゲームなどのメカをリリースしてきたことでも知られる同社が、スケール模型、しかも戦車でも飛行機でもなく電車をリリースするというニュースは、驚きを持って迎え入れられました。

この商品を企画した担当者の中野裕貴さんに、同社の特徴から注目の的になっている電車の新製品についてお伺いします。



◆目次◆

<第1回>精密機器分野からホビー業界に進出 ~PLUMの精度と品質の理由~

<第2回>地元諏訪に愛されるオリキャラ「諏訪姫」 ~長野・諏訪 地元企業の矜持~

<第3回>フィギュアのPLUMが鉄道模型に参入!? 技術力を背景に、中央線を極限まで再現する

 

◆◇◇◇

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株式会社ピーエムオフィスエーさんのブランド「PLUM」は、フィギュアやゲーム関連メカの模型を扱うブランドとして定着しています。そもそも、ピーエムオフィスエーさんとはどのような会社なのかまずはお話しいただけますか?

 

中野:

弊社には、ホビー事業と金型事業の2本の柱があります。もともとは精密部品の金型を設計製造している会社だったのですが、リーマンショックを機に下請けからメーカーになろうという社長(代表取締役社長 山口晃氏)の強い意志があり、現在に至っています。

 

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リーマンショックが2008年ですから、最近といえば最近ですね。

 

中野:

そうですね。会社としては今年、2019年でちょうど20年目に入ります。リーマンショックが10年ほど前ですから、それを機にホビーに進出したという流れです。社長はもともと別の会社で働いていたのですが、20年前に起業してプラスチック部品の設計から金型製作を行う事業をし、そのノウハウを活かして模型やフィギュアを作るという、現在の形になっています。

 

>:

社長はもともと金型の会社に勤めていらっしゃったわけではない?

 

中野:

諏訪市の精密機器メーカーで金型設計などをされていて、独立したとのことです。

 

>:

企業としても、社長個人としてもオモチャやホビーとは無縁だったんですね。

 

中野:

はい。リーマンショック前までは、カメラのミラーボックスの中身や自動車の精密部品などの金型を作っていたそうです。これらはミクロン単位の品質や精度を競う仕事なので、その技術を使ってホビーもやってみようとなりました。

 

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リーマンショックの時に自社商品の必要性を感じたのは分かりますが、いろいろな選択がある中で、なぜホビーだったんでしょう?

 

中野:

10年くらい前はオタクブームのような流れが世間にあって、社長がそれを見つけてきたんです。リーマンショックで不景気だと言われていたのに、ホビー系をはじめとした展示会やイベントにはお客さんが殺到して、モノを元気よく買っていくのを見たんですね。

そこで、金型事業も継続しながら、ホビー系という柱も作って会社を強くしようという意志があったようです。

 

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最初の自社ホビー商材はなんだったのですか?

 

中野:

1/100 「SA-77 シルフィード」のプラスチックキットですね。

 

▲2010年に発売された、1/100 「SA-77 シルフィード」(税抜 5,200円)。1993年に3DCGのシューティングゲームとして人気を博した「SILPHEED」の自機です。

(C)1993 GAME ARTS

 

中野:

いま見ていただいているのはのはリニューアル版ですが、これが、金型を作って自社商品として販売したものの第一弾です。当時はモールドのキレといいますか、ディテールの鋭さを評価していただきまして、一気に参入したという感じですね。この商品からすでに、バリバリにモールドを入れて作ったんです。

 

>:

リーマン直後だったのに反応がよかった?

 

中野:そうなんです。けっこう売れました。

 

>:

そこから発展されていったと思いますが、現在は模型以外にもフィギュアなどもお取り扱いです。どのようなラインナップなのですか?

 

中野:

メインはフィギュアで、版元様から版権をお借りして作っています。それから、プラスチックキットですね。

模型に関しては版権をお借りして作ったものと、自社オリジナルの「プラアクト」というシリーズがあります。プラアクトは自社オリジナルのロボットで、「モデリングサプライ」というパーツや武器類など、他の模型と一緒に遊べるようなものをラインナップの一部に加えています。

ほかには、完全にキャラでもロボでもない、トラスみたいなものも作っています。

 

▲「プラ・アクセサリー01:トラス(角)」(税抜1,500円)。情景模型をはじめ、写真のように戦闘機などの完成品を飾るディスプレイとしても使える。

 

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展示会などのイベントで配布されていましたよね? 斬新で驚きました(笑)。

 

中野:

それですそれです(笑)。大手さんがやらないようなことをやろうということです。フィギュアに関しても、数多ある商品の中で、マニアックなものを出していく姿勢です。

 

>:

フィギュアメーカーさんとしても地位を確立していますよね。

 

中野:

お客様に、PULMブランドへのイメージを持っていただけたのが、アニメ『ロウきゅーぶ!SS』なのではないかと。

 

▲『ロウきゅーぶ!SS』のフィギュア「1/7スケール「袴田ひなた~うさぎさんVer.~」。現在は「「湊智花~うさぎさんVer.~(Refine)」(税抜8,800円)が販売されている。

(c)蒼山サグ/アスキー・メディアワークス/TEAM RO-KYU-BU! SS

「あそこのメーカーは小さくてかわいい系の女の子、小学生みたいな子達を作らせるとすごくデキがいい」みたいな、そういう良いレッテルを貼っていただけたのかなと感じていて、業界の中でもキャラクターが確立してきたのではないかと思いますね。

 

 

PLUMを支える金型の技術力

 

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参入して約10年、未知のジャンルだったけれど、今は立ち位置が確立されてきたということですね。御社の商品の特徴としては、金型も作られていると言うことなので、技術力ということになりますか?

 

中野:

そうですね。それが最大の特徴だと思います。また、我々の場合は工業分野の出身ですから、ホビー業界の中では納期遅れというものに対してかなりシビアな方ではないかと。また、不良がないように、検品も十分行っています。品質第一、納期第一というのは、社長の哲学のひとつでもありますから。

 

>:

ホビー事業部のことを、もう少し教えてください。何人くらいのスタッフがいらっしゃるのですか?

 

中野:

ホビー事業部としては東京事務所に6人常駐しています。僕は企画担当という形ですが、なにぶん少人数なのでそれぞれがいろいろな仕事を兼務というか、助け合いながらやっています。

模型に関しては、企画原案や修正、塗装は東京で、CADから起こす部分は長野の本社で行います。長野では、工業の世界の中で、普段は1/1000ミリ単位の公差の中で商売している人達が同じ尺度で模型を作っているんです。

第一弾のシルフィードもそうですが、細かいパーツ以外は嵌合だけで組み立てられてしまいますし、その機構を考えるのは得意です。

 

>:

職人さんが、工業部品を作りながら模型もやっていると?それはほかのメーカーさんにはない特徴かもしれないですね。

 

中野:

そうですね。それに、量産工場も、ホビーだけを扱っているわけではなくて、自動車や精密機器の部品を作りながらホビーの商品も作っています。ですから、検品の品質も自動車メーカーのクオリティなんですよ。

 

>:

命に関わる部品と同様の検品が行われていると?

 

中野:

ですから、模型ではあるけれど、実物といいますか、実際に使われる部品と同じ品質でお客様の手元にお届けしているので、それは我々独自の文化だと思っています。たとえば、後ほどお話をしますがこのつり革のパーツなのですが、1回目に試作した時は歪みが発生したので・・・

 

▲つり革のパーツ試作品。フレームが少し膨らんだように曲がっている。

 

中野:

設計変更をして歪まないようにランナーを追加しました。

 

▲追加されたランナー。フレームがまっすぐになっている。

 

中野:

我々の考え方としては、お客様の手で組み上げられた模型の完成品は、言ってみれば2回目の商品なんです。ですから、ランナー状態こそ1回目の製品であって、それが美しくないとダメということです。

 

>:

金型屋のポリシーとして、成形品そのものが製品だと言うことですね?

 

中野:

ランナー状態の呼び名を「製品」と言うのは、そういう意味です。お客様に納品するときの良・不良の判断も、型に取られて若干白化してしまう部分にもこだわって、ルーペで確認しながら歪みを減らすようなことをして、金型を磨き込んで直していきます。

よりいいものを出すように、日々職人魂をもって戦っているんです。もっとも、他社さんでもそういうことをされているかもしれませんが、あまり表に出ないエピソードだと思いますので。我々は金型屋さんなので、そういうことをマメにやって、よりよい製品を作ろうとしています。

 

>:

ものの良さの裏に、そういうこだわりがあると分かりました。職人芸という感じですね。

 

中野:

そうですね。実際の加工についても、本社2階の設計部屋と1階の金型加工現場でデータをやりとりして、マシニングセンターで加工したり研磨したりと、密にやりとりをしています。

また、後ほど紹介する電車の模型に関しては、放電加工をほとんど、というか一回もしていないと思います。マシニングセンターで超小径刃物を使い加工していて、そういうことをしているメーカーさんは、たぶんほかにないと思います。

 

>:

基本的には放電加工ですもんね。

 

中野:

そのあたりは、ある意味コストと予算・価格を天秤にかけることになりますが、より我々のスタイルに合ったものを突き詰めてのことで、それは売りだと思います。



◆◇◇◇

精密機器を設計・製造していたピーエムオフィスエーが、その技術をもってホビー業界に参入したというのは、とてもバイタリティを感じる話でした。また、ホビー業界に参入したあとでも、工業の世界の規律を守ることで自社の独自性を打ち出していく姿勢には、「なるほど」と頷けるものがあります。

次回のキーワードは、「長野・諏訪」。地元企業としてピーエムオフィスエーの活動や、その心意気をレポートします。

<第2回>地元諏訪に愛されるオリキャラ「諏訪姫」 ~長野・諏訪 地元企業の矜持~

 

文:吉川大郎

取材・写真:小縣拓馬

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