<第2回>地元諏訪に愛されるオリキャラ「諏訪姫」 ~長野・諏訪 地元企業の矜持~

PLUM
長野県諏訪発のフィギュア・ホビーメーカー
長野県のホビーメーカーというのは珍しい。
ピーエムオフィスエーの特徴として、その技術力のほかに長野・諏訪に本社を置いている点が挙げられます。同社のキャラクター「諏訪姫」は、すでに誕生から10年近く経過し、地元に愛されるまで育ってきました。精密機器産業が盛んな同地に軸足を置く同社の、地元との繋がりを聞きます。
◆目次◆
<第1回>精密機器分野からホビー業界に進出 ~PLUMの精度と品質の理由~
<第2回>地元諏訪に愛されるオリキャラ「諏訪姫」 ~長野・諏訪 地元企業の矜持~
<第3回>フィギュアのPLUMが鉄道模型に参入!? 技術力を背景に、中央線を極限まで再現する
◆◇◇◇
>:
前回のお話にも出てきましたが、長野・諏訪に本社があって、諏訪姫など、地元企業としてたいへん強い繋がりがあるように思えます。メイドイン諏訪というのも、御社の大切なファクターですよね?
中野:
そうですね。もともと諏訪という地域は工業部品やレンズ、そしてカメラ筐体を作るのが得意といいますか、前々からやっていた地域なんです。そこで社長がピーエムオフィスエーを立ち上げたわけですが、金型の技術を生かしたホビーを作れないか?と思ったわけです。
>:
長野でホビーメーカーさんというのは、聞かないですもんね。
中野:
ないですね。たぶんうちだけではないでしょうか。
>:
そして、「静岡はホビー」と同じように、長野というと精密機械のイメージがすごくあります。
中野:
たぶん、突き詰めて考えれば全国で金型を作れるホビーメーカーというと、うちのほかは数社くらいではないかと思います。そういう目で見ても、世界的に珍しいメーカーなのかなと。
>:
商品も、模型のオリジナルシリーズもあれば、諏訪姫みたいなオリジナルキャラクターもありますよね。
中野:
そうですね。「諏訪姫」は地域を盛り上げようという意図と、自分達のところで育てられるキャラクターを作りたいという思いから始まりました。公認をいただいているんですよ(長野県諏訪市公認 宣伝キャラクター、長野県諏訪警察署公認 交通安全キャラクター)。
ほかにも長野県塩尻市の「玄蕃サラ」も、長野県塩尻市振興公社公認 まちづくり応援部長として活躍していて、地域活性化に使っていただいています。
うちはモノ作りの会社で、IPを育てる会社ではありません。基本的には、この子達はモノ作りをするためのキャラクターです。最終的には、ミニフィギュアを出したり模型を作ったり、さらに広がれば、ピーエムオフィスエーは自動車のラッピングもできますので、それを受注するビジネスもしています。
そもそも「諏訪姫」は社長が作ったのですが、アニメ化などの考えはまったくなくて、長く愛される、地域に浸透したキャラクターを目指しているんです。
>:
一瞬で消費されるキャラクターではない?
中野:
そうです。諏訪姫も来年は10年目になりますが、10年もっているIPって最近だいぶん少ないですよね。そう考えても、成功している例のひとつではないかと思います。
>:
社長の行動力がすごいですよね。金型の職人という地歩があるところに、ホビー系の業界に突っ込んでいくというか。普通の金型メーカーさんでは、あまりないのではないでしょうか?
中野:
最初の頃は苦労していたみたいですよ。銀行に「このロリキャラクターのフィギュアを作りたいんですがお金を貸してください」と言っても、あまり理解されなかったんですよ!!もちろん「諏訪姫」の話をしても周りの方々は「???」でした。
>:
それが今となっては。
中野:
そうですね。諏訪姫もある程度地域にも浸透しています。
諏訪地域には「諏訪圏工業メッセ」(https://suwamesse.jp/)というイベントがあるのですが、そこに出展して、ガチガチの工業製品が並ぶ中、うちは「諏訪姫」の看板をどかーんと掲げていたりして(笑)。元々かなり異端な存在でしたし、今もまあ、異端なのですが(笑)、地域の方々には浸透しているようです。
>:
10年続くIPというところは大事ですよね。そこにも、職人魂として長期的なモノ作りという観点があるのかもしれないですね。
中野:
やっぱりモノ作りの会社ですので、昨年も社長が「ピーエムオフィスエーはモノ作りの会社だ」というスローガンを大々的に話ししていて。ホビーに限らず、シャベルも作ったりしているんです。
▲ピーエムオフィスエーのシャベル製品「S'zシャベルズ」。写真は、特殊フィルムバージョンで、諏訪姫絵柄が貼られているが、OEMでオリジナルデザインも受注している。「通常セット(特殊フィルム加工なし)」が税抜8,800円、「特殊フィルム加工セット(PLUMオリジナル諏訪姫柄)」が税抜9,500円。
>:
これも自社製品なんですか? 確かに、長野県は雪も降りますもんね。
中野:
2014年のワンダーフェスティバルで、大雪が降ったのを覚えていますか? あのとき、うちのクルマはスタッドレスだから問題なかったのですが、周りのクルマが全部止まってしまって(笑)。
そのときに、車載スコップがあったら最高だったじゃん!という話で作ったらしいんですよ。だからサイズも小さくて、車載ができます。そして普通のプラスチックのスコップよりもずっと硬い。構造設計をやっている人間が作っているので、しっかりしていて丈夫なんですね。
それから、ホビーの延長線上でモータースポーツにも参加しています。
>:
ホビーに囚われないというのは強みですよね。モータースポーツは、やっぱり自動車部品を作られていての発想なのでしょうか?
中野:
レース用の温度調節パッドなどを作っているんです。レース用のクルマって、エアコンがないんですよね。だから熱中症にならないようにペルチェ素子(電流を流すと熱が移動する素材。小型のクーラーボックスや、パソコンの冷却装置などに使われている)が入っている機械を置いて水を循環させる簡易クーラーみたいなものです。レースに参加するのは、耐久性などをレースで試せるということもあります。
>:
本当に幅広いですね!
中野:
何屋さんなのかと聞かれたら、もうわからないですが(笑)。
>:
モノ作りやさんということですよね。
◆◇◇◇
模型やフィギュアはもちろん、諏訪姫、スコップ、レース用のクーラーなど、一見関連がないように見えながら、その根底には、ピーエムオフィスエーの一貫した「モノ作り企業である」という姿勢を感じました。こうした姿勢は、自社IPである諏訪姫を、あくまでもモノ作りのためのアイコンとして育てていくという戦略にも通じています。
次回は、そのピーエムオフィスエー、PLUMが打ち出す新機軸、「電車」の詳細についてレポートします。
<第3回>フィギュアのPLUMが鉄道模型に参入!? 技術力を背景に、中央線を極限まで再現する
文:吉川大郎
取材・写真:小縣拓馬