<第2回>解き方はいつも1つ!別解なき「はずる」の開発舞台裏

はずる HUZZLE
はずす、パズル
はずす、パズル「はずる HUZZLE」シリーズ。世界50カ国以上で年間100万個以上の販売を誇るトップブランドです。
今回はパズルの老舗メーカー ハナヤマ社で「はずる」の開発者である坂本忠之さんに、シリーズの魅力などについてお伺いします。
<第1回>単なる知恵の輪じゃない?有名アスリートもハマる立体パズル「はずる」の魅力
<第2回>解き方はいつも1つ!別解なき「はずる」の開発舞台裏
世界に散らばる「はずるデザイナー」
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これだけたくさんのバリエーションがある「はずる」はどのように企画・商品化されているのでしょうか?
坂本:
まずは世界中のパズルデザイナーネットワークを駆使して作品を選定します。完全新作から過去名作のアレンジまで、幅広いアイディアの中から「はずる」に適したものを選んでいきます。
「はずる」の作品には大きくふた通りあって、1つめは「デザイン先行型」。美しい形状をまず作って、それをどうパズルにしていくか考える方法です。もう1つは「機構先行型」。パズルとしてのギミックをまず考えて、デザインを具現化していくパターンです。
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「はずるデザイナー」って、具体的にどんな方々なのですか?
坂本:
建築家やプログラマー、学校の先生から彫刻家まで、本当に多種多様な人たちで構成されています。パズルデザインを専業でやっているのではなく、あくまでパズル作りが好きで、趣味の延長で「はずる」のデザインもやっているようなメンバー達です。
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それだけ多様なメンバーだからこそ、アイディアが尽きないのですね!
坂本:
昔は手作業で試作品を作らないといけなかったものが、今はCADなどを使ってパソコン上で出来るようになり、アイディアの幅もものすごく広がっています。私もびっくりするくらいの新しいアイディアが毎年生まれ続けています。
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「はずる」として選定するにあたって見ているポイントはありますか?
まずは「はずして、元に戻す」タイプのパズルであること。そして、量産販売する上での強度、サイズ、遊びやすさといった部分は当然ながら考慮しています。でも、それさえ満たせば何でもありの、自由度の高いシリーズだと思います。
「別解」との戦いを乗り越えて
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開発をする上でのこだわっていること、苦労して乗り越えていることなどがあればお教えください。
坂本:
初期のアイディアが「はずる」に適したものになるまでに試行錯誤があります。例えばこの「キャスト ドーナツ」。当初は中にボールが2つ仕込まれていたのですが、それだとコロコロ転がってしまうし、アイディアよりもの操作性の問題になってしまうので「ボールはダメ!」とデザイナーに押し返しました。
▲はずる「キャストドーナツ」
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それは企画をゼロから考え直すレベルですね。
坂本:
でも結果的には、元のアイディアと基本的なコンセプトは共通しながらも、ボールを使わずによりシンプルな構造で、かつデザインも美しい素晴らしい商品が出来上がったんです。これが出てきた時には本当に驚きましたね。
あと開発する上で「はずる」特有の難しいポイントがあります。それは「別解を作らない」こと。
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解き方が1つしかない、ということですね。
坂本:
複数の解法があるパズルが悪いわけではありませんが、「はずる」としてはできる限り1つにしたい。また、量産するとどうしても個体差が出てくるのですが、その差で別解が生まれるようでもいけません。形状からメッキの厚みまで、コンマ何ミリの精度で微調整を繰り返しています。
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あとから「別解が見つかってしまった!」みたいなことはないのですか?
坂本:
ありましたよ(笑)。「これで大丈夫だろう!」と検証を繰り返しても、また別の解き方が見つかってしまうことがあります。何回も改良した商品もありますね。
例えばこの「バロック」は別解との戦いの歴史です(笑)。予期しない別解が後から何度か発見され、その度に別解をつぶしてようやく「もうこれで大丈夫」と思えるようになった商品です。
▲はずる「キャスト バロック」
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なかなか壮絶なプロセスですね。
坂本:
中には何年もかけて別解をつぶして商品化に至った商品もあります。それでも無理やり別解を潰すのではなく「美しく別解を無くす」のがこだわりポイントですね。
例えばこの「キャスト カルテット」。一見、正方形が2つ絡みあっている形をしていますよね。当初のデザインは実際に正方形でした。しかし量産上の個体差でどうしても別解が出てしまう可能性が消えない。最終的には「6度」だけ傾けた平行四辺形にしています。デザイン性を毀損することなく「美しく別解を無くした」例ですね。
▲はずる「キャスト カルテット」
説明不要。世界中で愛される「はずる」
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坂本さんご自身は昔からパズル好きだったんですか?
坂本:
私は小さい頃からなぞなぞが大好きで、その延長としてパズルもよく遊んでいました。中学生になってもパズルの本を読み漁って、高校に入った頃から「自分でパズルを作る」ことにハマっていきましたね。
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どんなパズルを作られるのですか?
坂本:
パズルの世界って大きく「紙と鉛筆で解くパズル」と「立体パズル」の二手に分かれます。クロスワードなどの紙と鉛筆で解くパズルと、立体物を使って解くパズルでは作り方が全く違いますので、どちらかだけという人が多いです。
そんな中でも私の場合は「どちらも」作る少数派です。
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パズルの何がそこまで坂本さんを惹きつけているのでしょう?
坂本:
私にとっては単純に「面白い」から飽きずにこれまでやって来れました。特に「シンプルで美しい」パズルに出会った時の感動はたまりません。
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「はずる」はまさにそんな商品がたくさんありますよね。
坂本:
そうですね。なので「はずる」をもっともっと浸透させていきたいですし、その先には「文化」としてパズル遊びが世界中で日常生活に溶け込み、根付いてくれるのが私の理想です。
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これからの「はずる」の展開も期待しています!
坂本:
「はずる」の魅力は説明不要。「はずして、戻す」だけの単純明快なパズルです。まずは一度遊んでいただいて、その楽しさが伝われば嬉しいです。