<第1回>はじまりは、四畳半の部屋でした。

プラッツ PLATZ
プラスチックモデルの企画・開発・輸入・販売
みなさんは「盆栽のプラモデル」をご存知でしょうか?
2017年のおもちゃ大賞ハイターゲット・トイ部門で優秀賞を受賞した、知る人ぞ知るヒット商品です。
この商品の生みの親は、静岡にある模型メーカー「プラッツ」。2000年の創業時には、社長の望月さんと取締役の二神さん、たった二人でスタートし、いまでは多くの話題商品を世に送り出す模型メーカーへと成長しました。
今回のエピソードは、創業メンバーの二神泰徳さんと、入社4年目の青山雅人さんに、<全3回>にわたってプラッツや模型作りの魅力について語っていただきます。
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まずは創業時のエピソードをお聞かせください。
二神:
「もともと、模型メーカーで、望月(現プラッツ社長)と私が同僚として働いていました。そこからある時、望月が体調を崩して会社を退社します。特にやることを決めて退社したわけではなかったんですよ。」
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それは意外です。はじめから独立目的で退社されたわけではなかったんですね。
二神:
「そうなんです。予期せぬ形で独立したので、本当にゼロからのスタートでした。」
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はじめはどんな事業をされたんですか?
二神:
「最初は、四畳半の部屋で望月と私の二人。いきなり金型をほってプラモデルを開発するお金も無いので、他社のNゲージ(鉄道模型)に載せられるようなコンテナを少量で作リ始めたのがスタートです。」
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それはかなり地道ですね。。
二神:
「そうですね。創業初期にあった資産といえば、二人がこれまで作り上げてきた業界での信頼関係と、ものづくりへの想いだけでしたね。」
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創業から18年。いまではこんなに立派な倉庫を持たれています。
二神:
「四畳半の部屋からスタートしたプラッツは、事業拡大に合わせて3度の引っ越しをし、2017年に現在の倉庫兼事務所に移ってきました。」
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なにか成長のきっかけとなった転機はあったのでしょうか?
二神:
「いえ。スケールモデルというのはいきなり大ヒットするものではないので、本当に徐々に、いまの形まで積み重ねてやってきた感じですね。」
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簡単におっしゃいますが、すごいことだと思います・・・。社員は何名いらっしゃるんですか?
青山:
「社員は16名まで増え、その大半が私を含めた2,30代の若手です。」
」
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まるでベンチャー企業ですね。いまの主力商品を教えてください。
青山:
「現在の定番主力商品は航空自衛隊の1/72スケールの戦闘機プラモデルキットです。5月の静岡ホビーショーで発表した『FS-T2改』などが代表的ですね。」
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これは、すごい細かさですね!かっこいいけど、さすがに初心者に作るのは難しそうです。。
青山:
「もちろん、普段プラモデルに馴染みのない方向けの商品も展開しています。たとえば大人気アニメ『ガールズ&パンツァー』のプラモデルは若い方にも幅広く購入いただいています。」
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『ガルパン』はたしかに大ヒットしていまや定番コンテンツですものね。鉄道模型用コンテナから始まって、初心者から熟練者まで、この幅広いラインアップは圧巻です。
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プラッツでは自社開発の商品だけでなく、海外模型メーカーの輸入代理も手がけていらっしゃいますね。
二神:
「プラッツが輸入代理メーカー始めた当時は、模型業界ではほかに輸入代理メーカーをやっている事例はありませんでした。なので海外メーカーの開拓もゼロからのスタートだったんです。」
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海外メーカーに信頼してもらうのはなかなか大変そうです。
二神:
「最初は在庫をたくさん持つ訳にもいかないので、受注した分だけを海外メーカーに発注してすぐに売る、といったことを繰り返していました。倉庫を借りるお金もないので、運送会社のスペースを借りて、そこで受注した分だけ仕分けして即発送、ということを地道にやっていましたね(笑)」
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なんと地道な(笑)
二神:
「でもしっかりやっていると、プラッツの口コミが海外メーカーの間で徐々に広がっていきました。いまでは多くの海外メーカーに信頼いただいています。」
青山:
「代表的なところでいうと、香港の『ドラゴンモデルズ』という、戦車を中心に扱ったメーカーの輸入代理をやっています。日本でも有名な大手メーカーさんです。」
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それはすごい。海外メーカーと日本メーカーの違いってあるんですか?
青山:
「おおまかにいうと、海外メーカーの方がパーツ分割が細かいです。」
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それは意外です。てっきり日本メーカーの方が細かいのかと思っていました。
青山:
「例えば戦車のキャタピラ部分は、実機はたわむんです。それを表現するために、この商品はキャタピラのつなぎ目を一枚一枚、別パーツで組み立てる仕様になっています。作るのに少し根気がいりますね。
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ちょっと修行が必要そうですね(笑)
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模型やプラモデルって、どうしても言葉だけで「難しそう」と拒否反応を示す人も多いと思います。
青山:
「私も入社前は接着剤を使うプラモデルは組み立てたこともありませんでした。」
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それはそれは大変だったんではないですか?
青山:
「いや。それが実際はそんなに難しいものではなく、むしろ一度やってみると楽しいものです。プラモ=難しいというのは、思い込みだったなぁと感じています。」
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なるほど。
青山:
「なので、常に新しい切り口を提案して、もっと新しいお客様に楽しんでいただけると嬉しいなと思っていますね。」
(つづきます)
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模型界のベンチャー企業、プラッツ。
そういうと、二神さんは「そんなかっこいいもんじゃない(笑)」と笑います。
ですが、彼らの挑戦が、模型界に新しい道を切り拓いてきたのは間違いなさそうです。
To be continued <第2回>『少女終末旅行』、キット誕生秘話。
取材・文・写真:小縣拓馬