<第1回>カードゲーム「Force of Will」、世界的ヒットの舞台裏

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<第1回>カードゲーム「Force of Will」、世界的ヒットの舞台裏

Force of Will

トレーディングカードゲーム

トレーディングカードゲーム(TCG)「Force of Will/意志の力」をご存知でしょうか?

 

たとえ聞いたことがなくても、無理はありません。なぜなら、日本では休眠状態の中、「世界」で大ヒットしたタイトルだからです。

 

 

「Force of Will」は2014年に北米でリリース後、人気に火がつき、2016年春には北米売上ランキングで「遊戯王」や「ポケットモンスター」など名だたるビッグタイトルに次いで第4位につけるほど、世界的カードゲームへと急成長しました。

 

しかし、その華やかな成功の裏には、日本での失敗など、まさに波乱万丈なエピソードが隠れています。

 

今回はFORCE OF WILL株式会社 代表取締役の宍戸英治さんに、<全3回>にわたって、成功/失敗談、今後の展望などについて語っていただきます。

 

◆◇◇◇

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はじめに、宍戸さんが「Force of Will」を立ち上げるまでの経緯をお聞かせください。

 

 

宍戸:

きっかけは『できちゃった婚』みたいな話だったんです(笑)

 

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できちゃった婚、ですか(笑)

 

宍戸:

「もともと私は、タムタムという鉄道模型やプラモデルを専門で扱うチェーン店を運営している会社で、経営企画をやっていました。そして、男性向けの趣味市場に携わり続ける中で、ターゲットユーザーの年齢層が年々と上がっていくことを感じていました。何か若い層に向けて、商品を出さないといけないな、と。」

 

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そこでトレーディングカードゲーム(TCG)に目をつけられたんですね。

 

宍戸:

「はい。たまたま友人がTCGの企画を持って声をかけてくれたんです。私もカードゲームは好きだったので、『じゃあ、やってみよう』と始めてみたのがスタートでした。」

 

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そこから世界でヒットするなんて、夢にも思わなかったのではないですか?

 

宍戸:

「そうですね。死ぬような思いをしなければ、そもそも世界を目指そうなんて思わなかったでしょうからね・・・(笑)

 

◇◆◇◇

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死ぬような思い、とは何があったのでしょうか。

 

 

宍戸:

「2012年に国内でシリーズを立ち上げた時、社員も採用し、秋葉原ジャックの大掛かりなプロモーションまで企画しましたが、結果は大惨敗でした。」

 

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売れなかった、ということでしょうか。

 

宍戸:

「もちろん、売れなかったということもありますが、それ以上に、IPビジネスにおける会社運営の大変さは想像を絶していました。会社の回し方もろくにわからないのに、どんどんと話だけが大きくなっていって、受け止められなくなったんです。」

 

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自分たちの器以上に、勝手に事業が広がっていってしまった。

 

宍戸:

「そうですね。もう時効だと思うので、さらに言うと、最初にTCGの企画を持ちかけてくれたパートナーが失踪してしまう、という事態も起こってしまいました。私だけが残され、メーカーなのに新商品を作る能力が無くなってしまったんです。

 

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普通ならそのタイミングで止めてしまいそうなものです。

 

宍戸:

本来は止めるべきだったんでしょうけれど、止める方法もわからなかった。結局、そのまま転がり落ちるように、失敗してしまいました。失敗した当時の私は、本当に廃人のように、戦う意志すら持てない状況に陥ってしまいました。」

 

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そのような状況から、どうやって海外展開を始められたのでしょうか。

 

宍戸:

「きっかけは、事業立ち上げに協力いただいた印刷会社さんが、『国内がだめだったのはもうしかたない。海外にワンチャンス賭けたらどうだ』と、フランスの『ジャパンエキスポ』への出展を勧めてくれたんです。

 

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最後のワンチャンスとして出展されたんですね。

 

宍戸:

「はい。ただ当時の私は廃人同然。しかも、タムタムに勤めていた頃にジャパンエキスポへの出展で大惨敗をした経験もあり、『ジャパンエキスポ、ぜったい行ったらダメ』と思っていました(笑)

 

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よく行く決断をされましたね(笑)

 

宍戸:

「もう失うものは何も無い状況でしたからね。ただ、ジャパンエキスポがどれだけ難しいイベントかは痛いほど理解していたので、徹底的に事前準備をしてイベントに臨みました。事前に世界中の小売店や販売代理店に1000通以上メールをしましたからね。

 

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1000通ですか!

 

宍戸:

「もちろん、ほとんど返信はありませんでしたが、その中で返信をくれた方々をすべて辿って、現地までプレゼンに行きました。」

 

◇◇◆◇

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その準備の上で臨んだジャパンエキスポでは、何が起きたんでしょうか?

 

 

宍戸:

「ここからは奇跡の連続です。とある現地の通訳担当の方が、会場中の知り合いに話を広げてくれました。そして、事前のメールきっかけで繋がっていたオーストラリアの販売代理店が取り扱いを決めてくれました。

 

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事前準備が結果につながったのですね。

 

宍戸:

「そして、その代理店のマネージャーのお兄さんが、たまたまインドネシアで販売代理店をやっていて、これもまた紹介してもらえたんです。

 

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奇跡的ですね!

 

宍戸:

「さらにいうと、イタリア大手の販売代理店の担当者が『新しいタイトルをちょうど欲していたタイミングだった』という奇跡も起こります。世界的人気ゲーム『World of Warcraft』のTCGが、鳴り物入りでスタートしたにも関わらず、突如終了したタイミングだったんです。」

 

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売上を計画していた部分にぽっかり穴が空いたタイミングだったんですね。

 

宍戸:

「はい。そのおかげで『Force of Will』が彼の目にとまり、取り扱いを決めてくれました。経営陣の反対も押し切り、その担当者が一人で頑張ってくれたんです。」

 

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奇跡の連続ですね。

 

宍戸:

「もうひとつ、ジャパンエキスポの後日談を話すと、イタリア・ベニスで行なった大会にドイツの老舗問屋のトップが見にきてくれたことがありました。しかし、大会を行なっているイタリアの方は、イタリア語しか話せなかった(笑)」

 

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それではドイツの問屋にプレゼンできませんね・・・。

 

宍戸:

「ところが、奇跡的にその方が『ドイツ在住のイタリア人』だったからイタリア語が話せたんです(笑)。おかげで、ショップの方がゲームの魅力を熱弁してくれて、取り扱いが決定しました。

 

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大失敗にみえた経験が、結果的に大成功のきっかけになっていたのですね。

 

宍戸:

「はい。国内で休眠状態だったTCGが世界で大ヒットしたなんて、前代未聞だと思います。でも出会ったチャンスを必死で掴んでいった結果、すべてが繋がってこういう結果になったのだと思います。

 

◇◇◇◆

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振り返ってみて、世界的ヒットの要因を言うとするとなんでしょうか?

 

 

宍戸:

『天の時、地の利、人の和』といいますけれど、ビジネスにおいては天の時・タイミングの重要性が80%くらい占めているのかな、と。『人事を尽くして、天命を待つ』ともいいますが、大いなるタイミングに乗ることができたのが鍵だったと思います。

 

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一歩踏み出したからこそ、そのタイミングに乗ることができた。

 

宍戸:

「そうですね。とにかく『目の前のドアを開け続けること』。待っていても何も始まりません。行動さえしていれば、会いたい人に巡り会えるし、奇跡は起こすことができます。

 

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どちらに進むべきか悩むことも多そうです。

 

宍戸:

「たしかに難しいですね。でも、とにかく飛び込んでみて、もしタイミングが合えば、勝手に成功のピースがはまっていきます。そして、タイミングが訪れたときに、ちゃんとチャンスを掴むことができるだけの準備をしておくこと。未知の世界で戦おうというのは、そういうことだと思いますね。

 

◇◇◇◇

まさに奇跡の連続で世界的ヒットタイトルになった「Force of Will」。成功の裏には壮絶なエピソードの数々がありました。

 

しかし、ひとたび出た人気を維持するのは、さらに大変なこと。次回はヒットの「その後」のエピソードに迫ります

 

To be continued <第2回>世界的ヒットを「続ける」ために必要なこと

 

取材・文・写真:小縣拓馬

 

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