<第1回>森の中の秘境?木組みのつみ木「クミノ」製造工房に潜入

KUMINO
きぐみのつみ木
すごいところに来てしまいました。四方は山に囲まれ、スマホは圏外(筆者の場合)。
この「秘境」とも言える、滋賀・東近江にある「箕川町」は、周囲をくるりと川の清流がとり囲む特殊な地形の中に、十数軒の民家がひっそりと立ち並ぶ小さな町。どこに行っても優しい川の音が聞こえてきます。
引用:Google
今回のエピソードはここ箕川町で、新たなつみ木として注目を集める「クミノ」を製造するクミノ工房代表・井上慎也さんに、<全3回>にわたって、「クミノ」づくりの裏側や、つみ木づくりに懸ける思いを語っていただきます。
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すごいところですね(笑)
井上:
遠くまでお越しいただきありがとうございます。この箕川町の南には「政所茶」で有名な政所町、北は木地師(きじし。ろくろを用いて碗や盆などの木工品を製造する職人)発祥の地として有名な蛭谷町、君ヶ畑町があります。この箕川町も、実は鎌倉時代の頃から集落が存在している、歴史ある町なんですよ。
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井上さんはもともと箕川町のご出身なのですか?
井上:
いえ、私は京都の山科出身で、いまも住まいは東近江市の別の町にあります。偶然この町と出会って、この町の魅力に惹かれ事業をスタートしました。
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箕川町との出会いについて、もう少しお聞かせください。
井上:
私が創業する前、森林組合に勤める友人から紹介された方が箕川町出身で、その方に飲み会に誘っていただいたことがあるんです。それまで私はこの町を知らなかったのですが、初めて来たときに、この「川」に魅せられてしまったんです。
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川、ですか。
井上:
はい。町のどこに行っても川の音が聞こえる、不思議な地形ですよね。この地形を生かすことができれば、この集落はきっと魅力的になる、と思いました。そして「クミノ」の事業を始めるときに、「箕川町でやりたい!」と森林組合に勤める友人に相談したんです。
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なるほど。そこから、この町の建物を借りて、「クミノ」作りを始められたのですね。
井上:
森林組合の組合長さんが、その年に箕川町の自治会長もされていて、町の人に説明する機会を頂きました。おかげで念願かなって、この町で事業をスタートすることができました。
◇◆◇◇
井上:
クミノの工房として借りているのがこちらの建物です。
井上:
もともと建築士として働いていた西村さんと私の2名で、クミノの開発製造を行なっています。
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クミノができるまでの工程をお聞かせいただけますか?
井上:
地元の製材所などで購入してきた「荒材」がこちらです。基本的には滋賀の杉やヒノキを使っていますが、他地域の木や、他樹種を使う場合もあります。
井上:
まず「直角出し」を行います。つみ木の形状を左右するので、この工程の精度が一番の肝となります。
井上:
「直角出し」の次は「厚み出し」の工程です。クミノの断面は一片が1寸(約3cm)の正方形となっています。ここでは、余裕を持って3.02cmで「厚み出し」を行ないます。
その次の「超仕上げ」の工程で、表面をかんな仕上げにします。「厚み出し」で持たせた余裕の0.02cmはここで削り落とされます。
◇◇◆◇
井上:
次の工程は「切断」です。「超仕上げ」が済んだ木材を、長さ18cmにカットしていきます。
井上:
そして、クミノの一番の特徴である2箇所の切り欠きを加えていきます。この切り欠きが継ぎ手となり、1種類しか形が無いクミノの可能性を無限大に広げてくれるのです。
井上:
工房で行なう最後の工程が「面取り」です。子供たちが遊んでも怪我しないように、丁寧に仕上げていきます。
◇◇◇◆
井上:
最後の工程ではクミノに焼印を入れていきます。クミノでは、必ず木材の産地を焼印にして入れるようにしています。
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1セットつくるのにどれくらいの時間をかけられているのですか?
井上:
このように全て手作業でやっているので、だいたい1セットあたり1時間かかっています。色んな機材を使って効率化している最中なので、今後はもっと製造時間を短くしていきたいですね。
(クミノ製造工程の動画はこちら。※音も合わせてお楽しみください。)
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しかし全て手作業とは、かなり大変そうです。
井上:
たしかに、時には「これで大丈夫だろうか?」と弱気になる瞬間もあります。でもそんなときは、森に入って焚き火でもすると心が落ち着いて、また頑張ろうと思えるんです(笑)。
◇◇◇◇
今回のエピソードは、滋賀の山奥でひそかに作られる新しいつみ木「クミノ」の製造工房に潜入させていただきました。
まだまだ始まったばかりのブランドですが、ここ箕川町から、井上さんは虎視眈々と「つみ木の世界スタンダード」を狙っています。
To be continued <第2回>つみ木の新しいスタンダードを目指す、「クミノ」の魅力
取材・文・写真・映像:小縣拓馬
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