<第1回>日本唯一の木製帆船模型メーカーが拓く、ものづくりの未来

ウッディジョー
木製帆船・建築模型キットの企画、製造、販売
◆目次◆
<第1回>日本唯一の木製帆船模型メーカーが拓く、ものづくりの未来
<第3回>静岡の模型業界と共に歩んだ70年。波乱万丈ストーリー
◆◇◇◇
「模型の世界首都」、静岡。
戦時中の昭和15年にこの地で生まれ、一貫して木製模型にこだわり続ける男がいる。その名も「常に木」と書いて常木則男、78歳。
常木が社長を務めるウッディジョーは、平成14年に創業して以来、木製模型の常識を超える精巧な商品を次々と世に送り出し、今では木製模型のトップメーカーとして業界を牽引している。
「もともとお城や船が好きだったわけじゃなくて、とにかくお客さんに喜んでもらえる商品を作りたい。ただその一心でやってきました。」
78歳にはとても見えない、まるで少年のような表情で常木は話を始めてくれた。
◇◆◇◇
ウッディジョーが作る商品のウリは、何と言ってもその精度の高さだ。レーザー加工機を駆使して建築物や船の造形を再現する力は、他社の追随を許さない。
だがそんな環境下でも、常木には慢心は無い。
「今は中国なども凄い勢いで成長していて、技術は必ず真似されます。それに打ち勝っていくために、開発メンバーとは絶えず喧々諤々、喧嘩ばかりですよ(笑)」
「例えばこの木組みの構造。どのように設計すれば実物に近づけながら、組み立てやすいものになるのか、開発担当者ととことん議論し尽くしています。」
◇◇◆◇
ウッディジョーの模型を組み立てるのに要する時間は数十時間、大きいものではなんと200時間以上かかるものもある。だが、やみくもに精巧さだけを追い求めている訳ではない。そこには常木の確かな信念が見え隠れする。
「開発メンバーには『作りやすく企画しろよ。でも作りやすくしちゃだめだぞ。難しく、楽しく作れるように』と、一見すると支離滅裂な話をしています。」
「木製模型を作る喜びは、『苦労してやっとできた』という瞬間です。だからお客さんに苦労をさせることは重要。でも、ただ作りづらいだけでは楽しくない。この塩梅が難しいところです。」
「精密な再現」と「作りやすさ」のバランス。
模型メーカーにとって永遠のテーマを、ウッディジョーも模索し続けている。
◇◇◇◆
常木には「日本のものづくり」の将来を、木製模型を通して明るくしていきたいという想いがある。
「『苦労して工夫して作れて嬉しかった』というものづくり体験って大事だと思うんです。今の子供向け商品はとにかく苦労せずに遊べるものが多いですが、将来的にその子供にとって本当に良いのかと考えた時に、 疑問があります。」
「今の子供たちが将来、後進に物事を伝える立場になった時に、本当のものづくりの面白さを知っている人がいるでしょうか。模型の使命はそういうところにあると思います。」
たかが模型。されど模型。
ものが溢れ、なんでも簡単に手に入る時代だからこそ、「簡単ではない」ウッディジョーの模型を作り上げた時の達成感は計り知れない。
(つづきます)
To be continued <第2回>親子2代で世に広める、木製模型の持つ魅力
取材・文・写真:小縣拓馬
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